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2024年9月、私は分配金の3,315円でカカオサンパカのチョコを買いに、丸の内ブリックスクエアへ行った。王のチョコ”ショコヌスコ”とフロール・デ・アサール。ソコヌスコのカカオは酸味が効いていて、口の中で果実に戻った。
レンガ張りの中庭を眺めながら、ふと気になった。
この3,315円は、そもそもどこから生まれたのか。
REIT(不動産投資信託)の分配金は、ビルや商業施設のテナント料を源泉にしている。ということは、目の前に立っているこのブリックスクエアのどこかのテナント料が、巡り巡って私の口座に入ったのではないか。そう想像すると少し愉快な気分になった。自分の払ったチョコ代の一部が、次の分配金として返ってくる循環を妄想した。
結論から言うと、その妄想は外れていた。
だが調べていくうちに、もっと面白い構造が見えてきた。今日はそれを書いておく。
※JREITやETFの基本については9月の配当金報告で解説しているので、そちらを先に読んでおくと話が早い。
1343の中身を開いてみた
私が220口保有しているのは、正式名称「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」、証券コード1343。野村アセットマネジメントが運用する、J-REIT全銘柄の値動きに連動するETFだ。
「J-REIT全銘柄」と言われても、それが具体的にどこのビルを持つ誰なのかは、買っただけでは見えない。そこで公式のマンスリーレポートを開いてみる。
2026年2月末時点で、1343の組入比率トップ5は次の通りだった。
| 順位 | 証券コード | 銘柄名 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 8951 | 日本ビルファンド投資法人 | 7.51% |
| 2 | 8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | 5.72% |
| 3 | 8953 | 日本都市ファンド投資法人 | 5.41% |
| 4 | 3462 | 野村不動産マスターファンド投資法人 | 4.55% |
| 5 | 8972 | KDX不動産投資法人 | 4.24% |
出典:野村アセットマネジメント公式マンスリーレポート(2026年2月27日時点)
最上位は三井不動産グループの日本ビルファンド、2位が三菱地所グループのジャパンリアルエステイト。不動産の二大財閥が上位を占めている。丸の内のカカオサンパカから歩いて3分の三菱UFJ信託銀行本店ビルあたりが怪しい。早速2位のジャパンリアルエステイト投資法人(以下、JRE)のポートフォリオを開いた。
丸の内ブリックスクエアは、REITの物件ではなかった
まずJREの保有物件リストから探した。丸の内ブリックスクエア、あるいはそれを含む「丸の内パークビルディング」という名前がどこかにあるはずだ。
……なかった。
念のため三菱地所本体のサイトで確認すると、丸の内パークビルディング(丸の内ブリックスクエア)は三菱地所の保有物件だった。運営はグループ会社の三菱地所プロパティマネジメントが担っている。
つまり、カカオサンパカが支払う家賃は、J-REITではなく三菱地所本体(銘柄コード8802)に入る。私の1343の分配金とは、直接つながっていなかった。
妄想は外れた。
ここで話を終えてもよかった。だがJREのポートフォリオ一覧をもう一度眺めていて、別のことに気づいた。
“隣のビル”たちが、JREの物件だった
JREが千代田区で保有しているビルをざっと書き出してみる(2026年4月現在)。
北の丸スクエア、大手町フィナンシャルシティノースタワー、大手町パークビルディング、三菱UFJ信託銀行本店ビル、有楽町電気ビルヂング。いずれも、カカオサンパカのある丸の内ブリックスクエアから歩いて10分以内の物件ばかりだ。中央区でもJRE銀座三丁目ビル、JRE銀座一丁目イーストビル、銀座三和ビルなどを持っている。
ブリックスクエアから地下通路を進めば三菱UFJ信託銀行本店ビル、大手町方面に歩けば大手町パークビルディング、有楽町側に戻れば有楽町電気ビル。そのすべてが、私の分配金の源泉になっている。
つまりこういうことだ。
ブリックスクエアで私がチョコ代として払った5,184円は、三菱地所本体に流れる。その同じ私が、JREを2位に組み入れた1343のETFを220口持っている。そして大手町や有楽町や銀座の”隣のビル”のテナント料の一部が、JREの分配金として集められ、1343を通じて私の口座に3,315円として振り込まれる。
直接の循環ではなかったが、大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)一帯で、三菱地所グループというひとつのエコシステムが動いていた。
JREの資産運用会社であるジャパンリアルエステイトアセットマネジメントは、三菱地所が100%出資する資産運用会社である。つまりJREと三菱地所本体は、親子会社のような関係にある。
丸の内は、かつて三菱財閥が荒地から切り拓いたビジネス街で、いまも「丸の内の大家」と呼ばれる三菱地所が支配している。その支配構造は、不動産を本体で持つか、REITを経由して投資家から資金を集めて持つかの違いでしかない。チョコを買っても、ETFを買っても、私たちは結局、同じエコシステムに関わることになる。
この気づきの方が、直接の循環よりもよほど面白かった。
500口なら、銀座のボンボンショコラは何個買えるか
せっかくなので試算してみる。
私はいま1343を220口保有していて、2024年9月の分配金は3,315円だった。口数を500口まで増やしたとしたら、どうなるか。
1343の直近12か月の1口あたり実績分配金は91.8円(2026年2月末時点の公式データ)。
- 500口 × 91.8円 = 年間45,900円
これを四半期ごとに分けると、1回あたり約11,475円になる。
丸の内ブリックスクエアのカカオサンパカでは、ボンボンショコラ1粒がおおよそ400〜600円。11,475円あれば、年4回のそれぞれで20粒前後の詰め合わせが組める。銀座のピエール・マルコリーニやジャン=ポール・エヴァンでも、1回の分配金で6〜8粒のアソートに手が届く。
年間を通して、四半期ごとに「丸の内か銀座の高級ショコラ店で好きなチョコを買う」という儀式が安定して続けられる計算になる。投資を続ける理由としては、悪くない動機だ。
もちろん分配金は将来も同じ水準で出続けるとは限らない。不動産市況が悪化すれば減る可能性もある。それでも、買ったETFの中身がどこのどのビルで動いているかを知ると、値動きのニュースが単なる数字ではなく、歩いたことのある街の話として入ってくる。これは地味に投資を続ける体力になる。
まとめ:出どころを知ると、分配金は景色になる
1343の分配金3,315円の源泉は、丸の内ブリックスクエアではなかった。だが、そこから歩いて数分の大手町・有楽町・銀座のビル群には、確かに私の分配金の出どころが点在していた。そして丸の内ブリックスクエアの家賃もまた、同じ三菱地所グループに流れていた。
J-REIT ETFは、買って放っておくだけでも分配金が入る。ただ、中身を一度開いてみると、自分が歩いている街の景色が変わる。 次に丸の内を歩くとき、私は「このビルの家賃は本体、こっちはJRE、あっちは別のREIT」と、勝手に頭の中で色分けをしてしまうだろう。それが楽しい。
分配金でチョコを買うと決めた私にとって、これは配当金生活の思わぬ副産物だった。
まだ証券口座を持っていない方は、1口2万円ほどから1343を買える環境を作るところから始まる。少額からETFを買える証券会社の選び方は、こちらにまとめてある。
→自分に合った証券口座の選び方とは?
※本記事内で言及したビルの保有者・運営情報は、ジャパンリアルエステイト投資法人および三菱地所の公式サイト(2026年4月時点)に基づく。構成銘柄比率は1343のマンスリーレポート2026年2月27日付を参照した。
※このとき買ったカカオサンパカのチョコが気になる方はこちら↓
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